Challenge

人手が入りにくい場所や環境に敷設されているパイプラインをパイプの内側から検査、修理するというような重要な作業を、効率と費用対効果の高い方法で実施することができる革新的なロボット ソリューションを開発して、「サービスとしてのロボット」ビジネス モデルを推進する。

Solution

SOLIDWORKSの設計、構造シミュレーション、モーション シミュレーション、製品データ管理(PDM)、レンダリングのソフトウェアからなるソリューション群に、数値流体力学(CFD)解析のSOLIDWORKS® Flow Simulationを加える。

Results

  • パイプラインを検査、修理する画期的なロボットを開発
  • 開発サイクルを数か月短縮
  • 数百時間に及ぶ試作品製作の時間を短縮し、製作に伴うコストを削減
  • シミュレーション テスト用のパイプ ファームをSOLIDWORKSで作成

ULC Technologiesは、2001年に創業した企業で、ロボット工学を専門とする部門を立ち上げて、エネルギー、公益事業、産業の各分野で使用するロボット システム、無人飛行システム、機械学習アプリケーション、検査技術を開発、展開しています。ULCは、画期的なロボット ソリューションと検査サービスを提供することで、公益事業やエネルギー業界の企業によるパイプラインやインフラの修理、保守を支援しています。

ULCは、クライアントに応じたサービスを実施するロボットを開発しています。たとえば、天然ガスや水素を運ぶパイプラインの内部をどちらの方向にでも1km以上にわたって検査、修理できるように、蛇のように動くモジュール式セグメント型インライン ロボットを開発しています。このようなモジュール式ロボットがあると、コストが抑えられ、使い勝手がよくなるため、予防保全の頻度を増やしやすくなります。また、層状に敷設されている都市インフラの下や川底の下のような、通常の掘削が不可能な場所でも、ロボットで漏れ口を検出し修理できるため、公共の場への影響を軽減し、温室効果ガスの排出量を削減し、コストを最小限に抑えることができます。

ULCはSOLIDWORKS® 3次元CADを使用してロボットを設計していましたが、バルブ、とめつなぎ、端の尖った障害物、90度の曲がりのように不規則な表面が多く、また、距離が長いうえに可燃性、腐食性、高圧という苛酷な環境の天然ガス パイプラインを移動できるロボットを開発するには、別の機能を足す必要がありました。この課題を解決したのが、SOLIDWORKS Flow Simulationだったのです。

 

SOLIDWORKSでモデリングした試験用パイプをULC Technologies製のロボットが移動しているところ

 

関連リソース

より高速で低コストのコラボレーション ソリューション

ULCは、SOLIDWORKSの設計ツール、PDMツール、統合型のシミュレーション ツール(構造シミュレーション、モーション シミュレーション、流体シミュレーション)、レンダリング ツールを使用して、針穴程度の漏れ口を検出し、パイプの内側から漏れ口を修理することが可能な初の蛇型ロボットの共同開発と反復作業を効率化して、開発サイクルを数か月短縮しました。

 

ULC Technologiesのシミュレーションにおける流体の軌跡モデル

 

シミュレーション テストによる時間短縮とコスト削減

「物理テスト用にパイプ ファームを作るか、風洞設備を購入または時間借りするか、シミュレーション ツールで仮想的にロボットの試作品をテストするかという選択肢に迫られました」とULCの機械エンジニアであるNicholas Efthimiades氏は説明します。

ULCは、ソリューションのスピードとコスト効率を上げ、すぐに利用できるようにするために、苛酷な環境を想定した仮想的なパイプラインを作成し、モーション解析にSOLIDWORKS PremiumまたはSOLIDWORKS Simulation Standard/Professional/Premium、数値流体力学(CFD)解析にSOLIDWORKS Flow Simulationをそれぞれ使用し、高圧パイプ内に多くの障害物がある中で、ロボットがどのように動き、どのくらいの性能を出すのかシミュレートすることにしました。次に、パイプライン メーカーと協力して、最終的には最も困難なパイプ セグメントにおけるロボットの性能を物理的にテストしました。

 

SOLIDWORKS Flow SimulationとSOLIDWORKSのモーション解析機能を使用して、パイプ内のロボットの動きをシミュレートし、構造シミュレーションと流体シミュレーションを組み合わせることで、試作時間を数百時間も短縮し、物理的な試作の繰り返しに伴う膨大なコストを削減することができました。

Nicholas Efthimiades氏
ULCの構造機械エンジニア

「ロボットにかかる抗力などの外乱を把握できたため、軽量化を図りつつ、ロボットの保持力とホイールのトルクを調整することができました。強化が必要な部分については強度を高め、重要性の低い部分と機構については材料と重量を減らして、設計を最適化したのです」とEfthimiades氏は強調します。

 

別の角度から見たときの、ULC Technologiesのシミュレーションにおける流体の軌跡モデル

 

専門性の高いレポートの作成とイメージのレンダリング

モジュール式インライン ロボットは、米国エネルギー省(DOE)との契約の下で開発されたものですが、DOEからは、書面によるレポートの提出と月次の最新状況の報告を求められました。ULCは、専門性の高いレポートの作成に、SOLIDWORKSシミュレーション ソリューションの自動レポート生成機能をよく利用していました。また、SOLIDWORKS Visualizeでレンダリングを作成し、そのレポートに掲載することで、設計コンセプトをDOEにわかりやすく説明したのです。

Efthimiades氏はこう締めくくります。「SOLIDWORKSの統合ツールにはCAD、PDM、シミュレーション、レンダリングなどのアプリケーションが揃っているため、このプロジェクトに必要なコラボレーションを支え、イノベーションを推進することができました」

 

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