Challenge

石油が満杯の地上式貯蔵タンク内部を検査できる潜水可能な自律型ホバリング ロボットの開発スピードを上げると同時に、タンク検査に伴うコストを劇的に削減する。

Solution

3DEXPERIENCEプラットフォーム上のデータ管理およびライフサイクル管理ソリューションでSOLIDWORKS CADを拡張して、オンラインでの設計およびコラボレーションを促進。

Results

  • 共同開発プロセスを短縮
  • リビジョン管理の改善によるエラーの減少
  • チームのコラボレーションと生産性が向上
  • 防爆規格C1D2の内部検査認定を受けたロボットシステムを開発

Square Robot, Inc.は、電池式の水中ロボットの開発に成功した大手ロボティクス メーカーです。ロボットは同社の子会社であるVeritankから派遣され、稼働中の燃料貯蔵タンク内部に入って、床面に腐食や完全性の問題(欠陥など)がないか検査します。同社は自律型の泳ぐロボットという、石油・ガス分野で高まるニーズに対応するため、ロボット工学の専門家3名によって2016年5月に設立されました。地上式貯蔵タンク内部の検査に加え、ボストンを拠点とするこのスタートアップ企業の自律ホバリング技術は、オフショアのインフラストラクチャの検査に幅広い応用性があります。

同社はまず、石油タンク検査用途として、危険な場所で使える無人機の製品開発に注力しました。手動操作のロボットを使った検査は高額なコストがかかるためです。この種のタンクは安全性確保のために政府規制で検査が義務付けられており、Square Robotにとってはそのニーズが絶好の市場機会になりました。同社のロボットは石油が満杯のタンクを空にせずに検査ができるためコスト効率に優れていると、シニア機械エンジニアのCharles O’Connell氏は話します。「私たちがホバリング技術を開発するまで、ほとんどのタンク検査はタンクの稼働を止めて行う必要がありました。タンクを空にしてカバーを開き、中を清掃して、手動で非破壊検査を行うのです。この方法では廃棄物処理の問題もありましたし、補修が必要になることもありました」同氏は説明します。「操業に著しい悪影響を及ぼすことに加え、この手動検査プロセスは時間もコストもかかるため、多くの製油所は直径46mのタンク1基を検査するのに200万ドル(US)の予算を計上していました」

子会社のVeritankが使用するホバリング ロボットの開発を通して、Square Robotはタンクの稼働を止めることなく、わずかなコストで、より高精度な検査を提供しています。こうした検査ロボットの開発には、危険な場所での作業認定を受ける必要があるだけでなく、設計やエンジニアリングに関する相当な量の課題が伴いました。石油、ガソリン、ディーゼル燃料が入ったタンクの中に電池駆動のロボットを落とす場合は、引火性蒸気が充満するエリアを安全に通過できる電気機器として認定を受ける必要があります。Square Robotは初期段階の製品開発をSOLIDWORKS®で行いました。同社のエンジニア全員が経験豊かなユーザーだったからです。とはいえ、5名のSOLIDWORKSユーザーは別々の場所で仕事をしているため、同社は設計コラボレーション、リビジョン管理、製品ライフサイクル管理ができるクラウドベースのソリューションを求めていました。

「私たちはまず、部品とアセンブリの開発、および図面作成をSOLIDWORKSで行った後、Google Drive経由でクラウドに保管するという流れで作業を始めました。大規模なデータセットについてはSOLIDWORKS Pack and Go機能を使いました」O’Connell氏は当時をこう振り返ります。「Google DriveにはCADデータを保管できるのですが、リビジョン履歴や、アセンブリと子アイテムの関係を保持するといったインテリジェントなことはできません。そのため、メインオーガナイザーである私が、どのローカルファイルを上書きするか考えながら、すべてのデータとリビジョンをローカルでせっせと管理していました。これはメインオーガナイザーに時間と労力の負担をかけるだけでなく、ヒューマン エラーを誘発するものでもあり、コラボレーションとは正反対の作業でした。私たちが必要としていたのは、コラボレーションが可能で、リビジョンを管理してくれて、承認済みのCADデータはロックしてくれるクラウドベースのソリューションでした」

3DEXPERIENCEプラットフォームを利用して、当社は国内外の燃料貯蔵タンクを一度に1基丸ごと検査できるロボットの開発計画を着々と進めています。

Charles O’Connell
シニア機械エンジニア

Square Robotは、同社にとって最適なクラウドベースのコラボレーション ソリューションを3D Component Designerに見いだしました。これは、SOLIDWORKSデスクトップソフトウェアとシームレスに連携する3DEXPERIENCE®プラットフォームの、データ管理およびライフサイクル管理ソリューションの1つです。「私たちは、より多くのエンジニアがコラボレーションして追加のロボット設計を行うという、以前のアプローチでは実現不可能な開発領域に到達しました。SOLIDWORKS代理店のTrimech Solutionsが私たちに3DEXPERIENCEソリューションを紹介してくれたタイミングも、これ以上ないというほど絶妙でした」O’Connell氏は言います。

「システムの設計や事業の立ち上げの際に、最高の人材がどこにいても連携できる環境が整っていない場合は、問題が起こります」こう話すのは、Square Robotの共同設立者であるWill O’Halloran氏です。「しかし、3DEXPERIENCEプラットフォームのようなクラウドベースのテクノロジーがあれば、そういう環境が実現します。このプラットフォームがあったおかげで、設計変更を即座にシェアできて、誰が何をやっているかをすぐに把握することができました。しかも、私たちはまだ始めたばかりなのです。設計を製品開発の他のステップにつなげるという部分はとくに、探求の余地がたくさんあることでしょう。」

 

効果的なコラボレーションが開発を加速

SOLIDWORKSのデスクトップ ユーザーは3D Component Designerから3DEXPERIENCEプラットフォームに接続できるため、Square Robotはデスクトップ オーサリング アプリケーションから直接、製品設計データやドキュメントを管理できるようになりました。3D Component Designerを使うことで、高額のコストを投じたり、導入済のSOLIDWORKSを他のものに置き換えたりすることなく、クラウドベースのプラットフォームでこれまで以上に効率的なコラボレーションを行えるようになったため、同社の開発サイクルが迅速化し、市場投入時間が短縮しました。「3DEXPERIENCEプラットフォームのおかげで、私たちのコラボレーションは急速に発展しました。トップレベルのアセンブリ オーガナイザーを必要とせずに、複数のユーザーがアップロードしたデータにすぐアクセスできるようになりましたし、SOLIDWORKS Pack and Goでデータのアーカイブができました」O’Connell氏は強調します。

「このソリューションを導入したことで、開発チーム内のコミュニケーションが活発になり、チーム全体の効率性が改善されたために、以前には起こっていたスケジュールの遅れがなくなり、開発期間の短縮が実現しました」同氏は説明を加えます。

リビジョン管理を強化

構成部品やアセンブリのリビジョン履歴を1ヵ所に保管できる3D Component Designerの機能により、Square Robotは面倒なリビジョン管理から解放されました。SOLIDWORKSのソリューションが同社にもたらしたのは、緊密なリビジョン管理と形式化されたワークフローです。これは、規制当局の承認と認定を必要とする製品メーカーにとって極めて重要です。

「Square Robotの無人タンク検査機は、防爆区域の作業認定を受けたロボット固有のリビジョンを管理するために、詳細な規制プロセスを経なければなりませんでした」O’Connell氏は指摘します。「今では、3D Component Designerは当社エンジニアの日々のワークフローの一部となり、CADデータのライフサイクルの変更を簡単に管理するのに役立っています。これは、SOLIDWORKS環境から一歩も外へ出ることなく、承認済みのリビジョンとリリース済みのリビジョンへの変更を防止できていることを意味します」

ロボットによる燃料タンクと床面の検査に成功

3DEXPERIENCEプラットフォームを活用して開発プロセスとロボット第1号の認定プロセスを早めたSquare Robotは、2019年5月、自律型ロボットの展開に成功します。それは、Square Robot初の稼働中検査が成功した日でもありました。検査場所は、エネルギー、製造、物流を多角的に展開する企業、Phillips 66の地上式ディーゼル燃料貯蔵タンク内部でした。タンクから燃料を抜かずに底面の完全性を評価でき、コストを大幅に削減できるうえに、ロボットが撮影するタンク内部の高精細映像を通して、沈殿レベルやコーティングの状態を把握できるようになったのです。