導入5カ月で各種負荷の傾向把握に成功、相対評価には自信
カリモクグループは、2015年9月、SOLIDWORKS Proと、
SOLIDWORKS Simulation Premiumを1ライセンスずつ
導入。7カ所ある生産工場の設計者が共用できる体制を整え
た。
新しいツールが加わるのは、設計者にとっては負担だ。しか
し、品質、コスト、説明責任などに対する要求が高まっている
ことはみんなわかっている。そこで富田氏は、グループ全体
でプロジェクトを組織し、役割も決め、事例作成を計画的に積
み重ねることで、社内機運盛り上げに気を配っている。勉強会
も月2回開き、成果発表と情報交換を活発に行う。
工場Aでは、既存のベンチ製品で使っている補強部品の厚
みや長さを変えて、前下桟のたわみの増加状況をシミュレー
ションした。補強部品の長さを1475ミリから1380ミリへと
変えた時点で、変位量が大きく変化することも可視化でき
た。そして、厚みや長さを変えたことで発生する弱点を既存ベ
ンチと同等になるまで補強するための対策箇所、対策方法、
設計への反映などを検討した。
工場Bでは、4本脚のダイニングテーブルについて、脚をカッ
トして短くした場合の強度の変化を確認。やはり、弱点発生箇
所の特定、対策方法などをシミュレーションした。
工場Cでは、ソファ新製品の骨組み作成前の設計事前検証を
行った。既存ソファに比べて大きな仕様変更を行ったので強
度を確認したかったからだ。シミュレーションの結果、応力や
変位量に大きな変化は発生していないことを確認できた。た
だし、フレーム枠の内側に最も強い応力が発生することがわ
かったため、その部分の接着剤塗布に留意した。
また、研究途上の事例もある。
ソファは、人が座ったとき、まれに異音が発生することがある
が、音の発生箇所・原因を特定するのはむずかしい。工場Dで
は、購入客からのクレームに修理対応して、3カ所への補強駒
追加、上桟の前後へのすき間確保を行った案件を、後追い検
証してみた。
SOLIDWORKS Simulationには、異音発生を特定機能は備
わっていない。そこで、荷重をかけ、負荷のかかる箇所や変形
部分をみつけることで、異音発生源の候補を抽出し、事前の
予防対策ができるようにすることを目指した。しかし、補強駒
追加・すき間確保の対策前と対策後で、応力値、応力分布には
大きな変化は現れず、異音発生原因の特定ができなかった。
それでも、部品各部への負荷状況は把握できたため、今後は
解析結果を見直しながら、異音発生源を特定する、より良い
方法を探していく。
「SOLIDWORKS Simulation導入5カ月目の現段階では、相
対評価に手応えを感じています。負荷の『傾向把握』はできる
でしょう。次段階では、実試験結果と突き合わせることで、解
析の精度、信頼性を上げ、『こういう結果が出たので、この設
計はNGだ』とはっきり言えるような絶対評価へ近づけていき
たい」と富田氏は意欲的に語った。