Challenge

  • ものづくりの授業は行っていたが、CAD、CAM、マシニングセンターを個別に教えていたため、モデリングから製作までがつながっていなかった。
  • 生徒の自由な発想に基づいたモデリングができる環境を整えたい。
  • ロボット製作のスケジュール管理を行い、完成度を高めたい。

Solution

  • CADと3Dプリンター、マシニングセンターをつなげて、データによるものづくりを可能にする。
  • SOLIDWORKSを導入し、ゲーム感覚でモデリングし、3Dプリンターで製作できる環境を整える。
  • 3DEXPERIENCEでスケジュールを共有する。

Results

  • 1年生であっても自由な発想でモデリングが可能になった。
  • 複雑な機械加工を要するロボットのパーツをSOLIDWORKSと3Dプリンターで製作できるようになった。
  • 3DEXPERIENCEのProject Planningを使用し、作業の分担や進捗が容易に把握できるようになった。

函工の電子機械科には、ものづくりを覚えるために必要な製図、加工などの実習と、情報技術、設計、工作などの座学のカリキュラムが用意されていた。しかし、かつてのカリキュラムでは先生の話を黙って聞いてノートを取るという古いスタイルの教え方が中心であった。「自主創造」を校訓に掲げる函工では、古いスタイルから脱却し、課題について自分で調べ、議論し、解決するという方向を模索していた。
科長の藤川大造氏は、あるデザインコンテストで作品が表彰された際の表彰式でKreeD社やソリッドワークス・ジャパンの社員と出会い、3D CADを教育現場でどう活用するかについて大きなインスピレーションを得た。

SOLIDWORKSを導入する経緯について、藤川氏は以下のように語っている。

SOLIDWORKSを導入して、データからのものづくりを実現

「以前は、CAD、CAM、マシニングセンター、NC加工機についての実習はありましたが、それぞれが別々のものであり、つながって動作するという認識がありませんでした。ところが、SOLIDWORKSを導入してみると、3Dでモデリングできるだけでなく、CAMソフトもあるので、3Dプリンター、マシニングセンター、NC加工機とつなげてデータによるものづくりが可能になるのではないかと思いました。
SOLIDWORKSは操作性が良いので、生徒たちはゲーム感覚でモデリングを行い、操作方法を覚えています。ロボットの製作でもSOLIDWORKSと3Dプリンターを活用して、1年生からパーツを作っています」

CSWA、CSWPに挑戦してレベルアップ

モデリングのレベルを高めるためにSOLIDWORKS認定試験を利用していると、藤川氏は語る。
「自由な発想でモデリングすることも重要ですが、的確にモデリングできているかを判断することが難しいという課題がありました。そこでKreeDさんから紹介されたCSWA(SOLIDWORKS認定試験・初級試験)の受験に挑戦することで、モデルの質量やアセンブリの重心などの基準を知ることができたので、より高いレベルでのモデリングができるようになりました」

全国高等学校ロボット競技大会の全国大会へ

「全国高等学校ロボット競技大会は全国から100チームほどが参加する大会で、北海道からは予選を通過した上位3チームが全国大会に出場します。本校は最近の全国大会に進めていないので、12名の部員が力を合わせてロボットを製作しています。
全国高等学校ロボット競技大会は、制限時間3分の中でロボットがテニスボールやペットボトルなどのアイテムを取り、その合計点を競うというものです。毎年コースが新しくなるので、コースに合わせてロボットを設計します。今年は車体の土台をしっかり作って、アームがぶれないようにしているのが特徴です。
ロボットの製作はいくつかの班に分かれて進めるので、工程管理が重要です。以前は、ホワイトボードにスケジュールを書いたり、口頭で発表していましたが、今は3DEXPERIENCEのProject Planningを全員が使っているので、誰が何をどこまでやっているのかが一目で把握できるようになりました。製作プロジェクトの進め方を大きく改革できたと思っています」

「SOLIDWORKSと3Dプリンターで生徒たちの自由な発想が形になり、生徒が主体になってロボット製作を進めています」

廣部 昌男氏
北海道函館工業高等学校 電子機械科 ものづくり愛好会 顧問 

SOLIDWORKSと3Dプリンターで、複雑な機械加工をクリア

「ロボットのパーツを作る際には、既存のパイプなどと自分で作ったパーツを組み合わせる方法と、最初から新しいパーツを設計する方法があります。どちらも材料を削ったり、切ったりする機械加工が必要なのですが、旋盤などを使った複雑な機械加工はできないので、3Dプリンターを使ってパーツを作ります。これは、SOLIDWORKSなしにはできません。
SOLIDWORKSで便利に使っている機能が2つあります。ひとつはアセンブリ機能です。以前は、組み立ててみたらパーツがぶつかってしまったというようなことで時間を無駄にしていたのですが、アセンブリ機能を使えば事前に組み上がりの状態を確認できるので、無駄がなくなりました。
もうひとつがToolboxです。例えば、細かい歯車を自分で作るのはとても難しいのですが、Toolboxから使いたい歯車を選んで簡単に追加できるので、大変便利に使っています」
SOLIDWORKSと3Dプリンターを活用することで、生徒が自主的にものづくりを行う環境が整ったと、廣部氏は語る。

「勝手にやる集団」を育てる環境を整える

「本校は工業高校なので、ものづくりが好きな生徒が多く入ってきます。ものづくりを行うには、何を作るかという発想とものを形にする技術が必要です。かつては材料を加工するなどの技術を教えることに重点が置かれていたのですが、そればかりでは何を作るかという発想の部分が育たないまま高校3年間が終わってしまいます。
世の中の変化が速くなっている現在、大事になってくるのは何を作るかという発想の部分です。言われたとおりの部品を作るだけでは不十分で、何をどう作るのかを考えられることが大事です。そのために生徒が『勝手にやる集団』となるように環境を整備しています。例えば、CAD室にはPCが40台あり、3Dプリンターがあります。生徒たちは、これらを使って自由自在にモデリングしています。3Dプリンターが壊れたときは、詰まったノズルを勝手に分解し、清掃して、また使えるようにする。そんな生徒も現れています。機材を自由に使えることで発想が豊かになり、勝手にものづくりに取り組む姿が見られるようになりました。
モデリングだけではなく、プロジェクトの進め方も上手になりました。先輩、後輩を問わずに、お互いにアドバイスしながらモデリングしたり、3Dモデルを画面上で動かしてチェックするといったことを一緒にやっています。Project Planningもスケジュールが共有できる効果以外に、計画どおりに行かない場合にリカバリーする手段を考えるという教育的効果も見られます」

3DEXPERIENCEについて

3DEXPERIENCEをスケジュール管理、CADデータの確認に活用していると、廣部氏は語る。
「Project Planning以外では、Compareも活用しています。モデリングの課題を出した際に正しくできているかの判断にモデルの質量を使っています。生徒は正しい質量になるようにモデリングするのですが、正しい質量にならない場合に図面を見て原因を探るのが大変でした。Compareを使えば、正解のモデルと生徒が作ったモデルを比較してどこが違うのかが一目でわかるので、大変助かっています。

デスクトップ版のS O L I D W O R K S を使い慣れているため、3DEXPERIENCEを使うとタイムラグやアイコンの違いなどから操作性が違う感じを受けます。3DEXPERIENCEにはいつでもどこでも使えるというアドバンテージがあるので、操作性がデスクトップ版と引けを取らないようになれば、素晴らしい製品になると思います」

自由にアイデアを試せる環境が生徒の創造性を伸ばす基盤になると、藤川氏は語る。


生徒のポテンシャルを解き放ち、世界をわくわくさせる人材を育成する

「SOLIDWORKSを導入してモデリングから製作までがつながったので、今後は、生徒が与えられたものを消化するだけではなく、さらに何ができるかを自分で調べて、実行できる環境を作るつもりです。高校生には次世代の日本を担っていくパワーがあります。型にはめずに個性をどんどん伸ばしてあげて、生きる力につなげられればと思っています。


本校の校訓は『自主創造』です。データによるものづくりが実現して、さまざまなアイデアを自由に試してみる環境が整いました。KreeDさんやソリッドワークス・ジャパンさんをはじめ、多くの方にご協力いただき、ここまでたどり着くことができました。
今後は、この環境を活かして高校生の持つ可能性を引き出し、創造性を育むことに注力します」ものづくりのDX化を行った函工では、生徒の自主性を尊重しながら次世代を担う人材育成に挑戦している。SOLIDWORKSは、今後もその挑戦の中核を担い続けるだろう。