開発から加工までSOLIDWORKS製品をフル活用
由紀精密では、技術開発から精密加工の工程でSOLIDWORKS
を上手に活用している。
設計では、もはやこれ無しでは設計できないというほど
SOLIDWORKSを使い込んでいる。例えば、宇宙関連部品を設
計する際にはロケットの振動に対する固有値解析が問題にな
るが、SOLIDWORKS Simulationを使えば、問題がすぐに見つ
かり、設計-シミュレーション-修正-再シミュレーション
というサイクルを手軽に何度も回せ、設計効率が大きく向上
した。また、物性データが豊富に用意されており、解析もし
やすい。
使い勝手の面では、1つの機能にたどり着く方法が複数ある
ことが使いやすさにつながっている。例えば、穴ウィザー
ドでボルト穴を設定する場合、最初からボルト穴として設
定することもできるが、とりあえず下穴を設定して、後か
らボルト穴に変更できる柔軟性がある。
また、SOLIDWORKSを使っているユーザーが多く、そのシェ
アが高いのも大変大きなメリットで、顧客とのデータのやり
取りが容易になり、打ち合わせの場で画面を見ながらCAD
データを修正できることも設計のスピード感につながって
いる。
データ管理では、図面管理にPDM Standardを導入して、検
印・承認を管理するようになった。図面のバージョン管理
も行っている。
CADの選定では、顧客とデータのやり取りがしやすいことを
最も重視した。SOLIDWORKSはユーザー数が多く、データ交
換では不自由しない。機能面では、ツールボックスの使え
るSOLIDWORKS Professionalがエンジニアから好まれるとい
う。新人研修時のCADトレーニングについても、内容が充実
しているチュートリアル機能を使って、よく使う機能を一通
り覚えてもらえば、すぐに設計の実戦に移っているという。
加工現場では、Mastercamが活躍している。由紀精密では
CADを導入する前にCAMを使って加工機械の複雑な制御を
していた経験があったので、数あるCAMの中でも最も信頼
できるMastercamを導入した。
今後のSOLIDWORKSについて
業務に欠かせないツールなので毎バージョンの機能強化に
期待する一方で、ハイエンドCADとは一味違って、使いや
すく、アナログプレーヤーAP-0ぐらいのサイズの製品を設
計するのにちょうどいいジャストサイズなSOLIDWORKSで
あり続けて欲しいと、永松氏は語る。
クラウド3DEXPERIENCEへの期待
「現在のデスクトップ版のSOLIDWORKSは新バージョンが出
ると、必要に応じてアップグレードを行います。しかし、毎
回エンジニアの工数を取られますし、お客様とのバージョン
違いでデータ変換が必要なこともあります。この先さらにク
ラウド化が進み、より多くのユーザーが常に最新バージョン
を使う環境になれば、こうした問題は解消できると大変期待
しています」と永松氏は語る。
設計データの保存や管理についても「現在は社内のサーバー
に保存していますが、クラウド上に保存できれば、オフィス
に縛られない、設計の新しいあり方も検討できると思ってい
ます」と期待を寄せている。
その一方で1つのデータを複数のエンジニアが扱う際の問題
やその難しさも痛感している。誰かがデータを上書きしてし
まったり、穴の寸法が合わなくなったりということが実際に
起きたこともある。データ管理、版管理、コミュニケーショ
ンと設計プロセスがうまく統合できると、設計者の働き方は
今後大きく変わるはずと予感している。
由紀精密が目指すべきところ
この5年間での同社の一番の変化は、グループを統括す
る由紀ホールディングスが設立され、グループ企業11社
と協業するようになったことだ。ハーネス製造、アルミ鋳
造、3D金属造形・加工などの得意分野を持つ企業が集まっ
ているため、ノウハウ共有や共同研究などのシナジー効果
が生まれている。しかし、現在グループ内で設計開発部門
を持っているのは由紀精密だけなので、グループ内で求め
られる機能・設備を開発し、全体のパフォーマンスを向上
させる盛り上げ役を目指したい。
今後も由紀精密の製品と呼べる製品開発には注力するが、技
術開発と精密切削加工の企業であることからはブレずに、得
意分野を活かせる製品の開発を手がけていく。
SOLIDWORKSは由紀精密の強みを支えるコアなツールであ
り、業容が拡大するにつれ、その重要性は今以上にますます
高まっていくだろう。